広島針

広島針の製造の歴史は、遠く300年以上前、藩主浅野家が下級武士の手内職として普及させたことに始まります。以来、品質の向上や製造の効率化などを図り地場産業として名を知られるようになりました。広島針を製造している、チューリップ株式会社は、1948年に広島で生まれた手縫針、かぎ針、レース針のブランドです。広島湾に注ぐ太田川の上流50キロの中国山地の中にチューリップの針工場がある「加計」(現、安芸太田町)という地域があり、江戸時代には、中国山地の大砂鉄地帯に位置する出雲と並ぶ芸北地域の「たたら製鉄の中心地」でした。そして、太田川の水運を使って必要な物資を諸国から集めるとともに「たたら製鉄」により製造された鉄を広島に送る集積地として繁栄を極めてきました。広島針はこのように加計の砂鉄を原料に「たたら製鉄法」によってできた鉄を太田川の水運を利用して、現在の広島市に運び、そこで針として加工することで発展してきたのです。この鉄を独占した広島藩では、「縫針」生産の地場産業がおこり、現在でも、広島は手縫針、侍針の全国生産量の9割以上を占める我が国最大の針の産地となっています。

広島針の特徴と魅力は、こだわりの針穴外面、内面がつややかで、大きめな針穴。丈夫なボディ程よいしなりがあり折れにくく、曲がりにくい。するどい針先高密度な研磨加工を施した、鋭い針先。スムーズな布通り長時間の針仕事でも疲れにくいのが特徴です。Made in Hiroshima広島の自社工場で生産する安心で高品質の針です。長年蓄積してきた針の製造技術「切る、削る、磨く」を生かし、絶えず技術の革新に心がけ、最高品質で社会に役立つ製品の開発をし続けています。

現在広島針は、機械の開発も同時に行っており、ハードの分野では、高度な技術力を有しています。その技術を生かして、針以外の新しい製品にも着手しはじめています。例えば、イカ鉤、動物用注射針、医療用注射針、耳かき、千枚通し、ひも通し等。特に医療関係の需要は、今後増えていくでしょう。広島針の製造には精密な技術力、品質管理力が要求されます。線加工をはじめとする、その精密な技術力を、あらゆる分野で生かしていくことができ、今後も電子部品関係との提携もはじまっていくとのことです。ハイテク時代を迎えて、こういった需要もますます増えていくことでしょう。広島針は、現在も世界40カ国以上に輸出され、多くの人に愛され続けています。