広島漆器

漆器は日本の伝統工芸品の一つであり、古くから受け継がれる伝統的な手法によって職人の手で一つずつ丁寧に作り上げられる非常に奥深いものです。中でも広島漆器で有名な高山清は、大正2年に仏壇の塗師屋から始まりました。多くの方々から愛され、仏壇の製造や寺院用具製作に携わる中、2013年4月に創業100年を迎えている非常に歴史ある企業です。広島は古来より、安芸門徒と言われるくらい浄土真宗の信仰が盛んな土地であり、浄土真宗が推奨する金仏壇が信者に向けて多く製造されてきました。その歴史的背景が広島で仏壇産業を成長させ、更には仏壇制作の過程で行う漆芸の技術も高く、伝統的工芸品の広島仏壇となっていったのです。

 そんな伝統工芸品の漆器ですが、プラスチック製品・化学塗料製品の普及や生活様式の変化にともなって、たくさんの出番をなくしてきました。しかし、自然と暮らす中で生まれた漆塗りは、修理をすると一つのものを永年使う事ができ、次の世代に引き継ぐ事もできます。また、漆器の良さは、「伝える」ということができることです。漆器は何回も塗り直すことができ、痛んでも、練っては研いで、塗っては研いでの繰り返しで成り立っていきます。一つ一つ異なる形状も塗り方で見え方が変わり、独特な曲線美を表現することができるのです。
 広島漆器の塗り工程は、「木地固め・布張り・布目摺り・地付け(2回~3回)・錆付け(2回~3回)・下塗り・中塗り・上塗り」と、研ぎの工程を入れると17工程になります。どの工程にもしっかり意味があります。漆を塗る段階では、湿度が高いとチジミ・ヤケという失敗も出てきますし、乾燥を終えた漆は強いのですが乾燥させるまでが、難しく湿度・温度調整をしないといけません。下地においては風をあてることもあり、工程を行った後も確り乾燥させて、次の工程に移るので制作にも時間がかります。漆塗りは「作る」と言うよりは、まさに「育てる」と言う感覚です。

 現在もなお、“伝統的な技術を新しい形にする”という想いをコンセプトに、高山清の4代目は大胆な漆器を作ります。尖った形の酒器や傾いたお猪口、通常食器には使わない「乾漆」の技法を使うなど、遊び心ある自由な表現で、制作を始めてわずか3年のうちに「日本伝統漆芸展/朝日新聞社賞」「全国伝統的工芸品公募展/日本商工会議所会頭賞」「日本伝統工芸中国支部展/広島県知事賞」など、名だたる賞を受賞しています。広島漆器は、日本の伝統文化を日々のライフスタイルにとりいれてもらえるよう進化し続けています。