宮島杓子

広島県の宮島でつくられている伝統の宮島杓子。その始まりは、寛政の頃(1789~1800)まで遡ります。神泉寺の僧・誓真という人がある夜、弁財天の夢を見てその琵琶の形の美しい線から杓子を考察し、御山の神木を使って作ることを島の人々に教えていきました。この神木の杓子で御飯をいただけば、ご神徳を蒙り福運をまねくという誓真上人の高徳とともに、宮島杓子の名声は世に広く宣伝されていったのです。形は弁財天の持つ琵琶の形から取られ、材質は栃、桜、桑等を木の目なりに割って使うために飯に香りが移らず、杓子に飯粒が付着しにくく、熱い飯にも曲がらない特徴をもっています。現在では、実用物以外に商売繁盛・家内安全・選挙やスポ-ツなどの勝運を願かけされて奉納されたり家に持ち帰ったりされて愛されています。

 宮島杓子の原材料は、主に広島県産のヤマザクラを中心に使用しています。広島県産ヤマザクラを使用する理由は、木のまちとして知られる広島県廿日市市(はつかいちし)は西日本有数の木材集積地があり、「質の良い木材」を選別することできます。そして、広島県廿日市市から木材を輸送するのでコストが抑えることができ、商品の価格に反映することができるからだそうです。その選別された原材料広島県産ヤマザクラから、杓文字の形に切り出して、職人の手でひとつひとつ丁寧に仕上げられていきます。細部まで研磨された美しい曲線は、手に持つとやさしい風合いで心を落ち着かせてくれるようななめらかな質感。手にもよく馴染み、使っていく度に良さを実感できるはずです。ヤマザクラの木質の特徴は、堅く弾力がありキメが細かいので丈夫で長く使うことができ、使えば使うほど木の色合いは赤みを増して味わいが出てきます。

現在「宮島まちづくり交流センター」に大杓子が展示されています。長さが7.7メートル、最大幅が2.7メートル、重さが2.5トンあり、世界一大きい杓子です。この大杓子は、宮島町が伝統工芸である宮島細工を後生に残すとともに、杓子発祥の地である宮島のシンボルとして製作し、厳島神社の世界遺産登録を機に展示を始めました。
 宮島杓子は現在も「幸せをめしとる」として縁起のよい宮島土産としても人気があり、さらには「誓いのしゃもじ」として結婚式での新郎から新婦へのファーストバイト。学問・豊穣・繁栄・勝負事の願掛けとして、高校野球や各種スポーツをはじめ企業や地元客にも大人気です。現在もなお、縁起ものとして沢山の方から愛されています。